局所再発、前立腺全摘除術は有用か?

局所再発、前立腺全摘除術は有用か?

前立腺内部のみの再発の場合に、手術(前立腺全摘除)というオプションがあります。

これを、救済前立腺全摘除術(Salvage radical prostatectomy)といいます。救済とは再発後の治療といった意味になります。

・手術の問題点はなにか?

① 合併症が多いと言われている

 1.通常の初発(最初の時点で行われる)の前立腺全摘除術と再発時の救済前立腺全摘除術を比較すると、放射線治療の影響により、周囲組織との癒着が強くなり副作用が多くなるといわれています。手術で一般的な、尿失禁、直腸損傷などのリスクが上昇するといわれています。

 2.しかし、最近は少しずつ変化している部分もあります。ひとつに放射線治療が変化してきており、依然の外部照射(3DCRT)などとくらべて最近の外部照射(強度変調外部照射:IMRT)や小線源治療(ヨードの線源を挿入するもの)や粒子線治療(陽子線や重粒子線治療)などは、周囲組織への影響が少なくなっている可能性があります。これは、より前立腺内部に強い放射線が照射され、周囲は抑えるといったふうに変化してきている可能があります。

 また、手術方法も以前は、開腹手術のみでしたが、最近では腹腔鏡手術やロボット支援手術などがひろくおこなわれるようになりより細かい手術が可能となっていることで上記の合併症の発生頻度も報告上は低下してきています。

問題点

・ただし、報告されている多くの論文は大規模施設でエキスパートな術者が行ったものが多いです。つまり、下記の海外のガイドラインでも述べられているように、慣れた病院で慣れた術者が行う手術であることは間違いありません。

・また、手術の選択は、とり切れることが最大の目的となります。(もちろん、転移やホルモン治療までに時間を遅らせることも目的ですが)術前、MRI・生検などを踏まえ手術適応を慎重に検討する必要性があります。

② 根治の可能性は?

・下記は2012年報告された、救済前立腺全摘除術のReview論文(様々な報告をまとめて検討した論文)です。

Eur Urol. 2012;61(5):961-71. Cancer control and functional outcomes of salvage radical prostatectomy for radiation-recurrent prostate cancer: a systematic review of the literature.

この報告によると、摘出後のPSA再発(採血上の再発)がない生存が 5年で47% から 82% 、10年で28% から 53%とほうこくしています。つまり、5年でも約半分の症例は、追加治療を行わないで経過が見れていることになります。ただし、これらの結果は、対象がどんな症例であったか?どこの病院でだれが手術をしたかということも大きく影響する可能性があります。また、術後の病理結果で画像ではリンパ節転移がなかったが、とった組織の中にはリンパ節転移があったということも大きく影響します。

 こう考えると手術前の状態、診断がとても重要と思われます。

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放射線治療後の局所再発前立腺がんの克服を目指す

・ある友人から自分の専門外のがんの相談を受けた。色々話している時に、ふと思った。患者さんは、短い外来時間で、がんの病態、治療、十分理解できていないのではないか。自分は、その夜、一人反省した。 ・私のひとつの専門領域である放射線治療後の再発前立腺がんの話にはなるが、この内容でお困りの患者さんの不安が少しでも改善し、病院で主治医と有意義な外来診察および相談の時間を過ごせるようになれば幸いである。